僕の母親は正義のヒーロー

僕の母親は正義のヒーローだ。

何を言っているんだと思われるかもしれないが実際そうなのだから仕方がない。

まず僕の母親はとにかく強い。僕の記憶にある限り風邪という風邪をほとんど引いたことがないと思う。先日もモデルナ製のコロナワクチンをいとも簡単に跳ね飛ばしていた。あのワクチンを接種して無傷な人間を僕は他に知らない。

そして偉大な母でもある。母が作るご飯は美味しい。僕が生まれるときに退職して専業主婦になった彼女は、僕が中学高校と通っているとき毎日ほとんど欠かさず弁当を作ってくれた。

厳しい母親でもあった。小さいころクソガキだった僕は母親に何回ビンタされたか見当もつかない。当時はただただ恐れていたが今になると叱ってくれた有難みを痛感する。

ここまで読んでくれた読者はただの良い母親ではないかと感じてくれたことと思う。だが、彼女は良い母親というだけではない。正義のヒーローなのだ。

彼女は曲がったことが許せない。僕がよく怒られたのも主にそのためだが、彼女の正義の矛先は自分の子供に対してだけではない。確か僕が小学生のときだったか、PTAの役員決めなどで何か嘘をついて仕事をするのを逃れようとした人を強く咎めて喧嘩になったことがある。数年前スーパーでパートを始めたのだが、野菜を汚く取って売り場を乱す客のことを許せず怒って言い合いになったという話も聞いた。そのパート先では意見の違いから社員の上司と揉めて数ヶ月も口をきいていないらしい。最低賃金でよくそんなに頑張れるなと感心する。

ただ僕の経験上母親が怒るときは本当に100%彼女が正しい。とにかく嘘や不正が何としても許せないというだけなのだ。どうしてこの母親から僕のような感情の起伏が少ない人間が生まれたのか未だに理解できない。

そんな母親も今年で50歳だ。偉大なところも、正義感が強すぎてちょっと心配になるところも含めて僕は彼女のことを尊敬している。むしろ50歳まであの正義感を維持できているというのはとてつもないことだ。僕は21歳にしてもう失ってしまった。どうかこれからも永遠に僕にとっての正義のヒーローでいてください。